1. 過敏性腸症候群とはなんですか?
1) 腹痛や腹部不快感といった症状をくり返し、排便の回数や便の調子の変化を伴う腸の機能的な病気です。「機能的」というのは、腸管に明らかな炎症や腫瘍などの器質的な異常はなく、腸管の働きに問題があります。
2) こどもの長引く腹痛の原因として頻度の高いもののひとつであり、ストレスと関係が深い病気として良く知られています。
3) 大人の有病率(その病気を有している人の割合)は約10%ですが、わが国の小学生の有病率は1.4%、中学1~2年生で2.5%、中学3年~高校1年で5.7%、高校2年~3年で9.2%と、成長とともに多くなることが知られています。
2. 原因は何ですか?
1) 完全に明らかにはなっていませんが、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった場合、回復後に過敏性腸症候群になりやすいことが知られています。
2) 起立性調節障害と合併することもあります。
3. よくみられる症状は?
1) 腹痛や腹部不快感をくり返し、腹痛は排便で和らぐことが特徴です。
2) 症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら続きます。
4. どのようにして診断するの?
最近3カ月の間に、月に3日以上にわたっておなかの痛みや不快感が繰り返し起こり、下記の2項目以上の特徴を示す時にこの病気と診断します(ローマⅢ基準)
1、 排便により症状がやわらぐ
2、 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
3、 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
※腫瘍や炎症による腸の病気を否定したり、甲状腺機能障害などを否定することも必要になることがあります。
5. 治療は?
1) 生活習慣の改善
3食を規則的にとり、暴飲暴食、夜間の飲食を避け、食事バランスに注意したうえで、ストレスをためず、睡眠や休養を十分にとることが必要です
2) 薬による治療
生活習慣を改善してもよくならない場合には薬による治療を行います。最初に用いる薬としては、腸の運動を整える薬や、プロバイオティクス(整腸剤)、高分子重合体(コロネルなど)を使用します。これらの薬は、下痢症状が中心の患者さんにも、便秘症状が中心の患者さんにも使用されます。また、おなかの痛みには、抗コリン薬(ブスコパンなど)を頓服として使用します。
3) 生活上の配慮
通学路や学校生活でトイレに行くことの配慮も必要です。症状の悪化した時に、心理的・社会的なストレスの関与が強い場合には、子どもや家族のカウンセリングが必要になることもあります。
6. 最後に
一旦、この病気と診断したケースでも、夜間の腹痛、微熱、下血(便に血が混じる)、嘔吐、体重減少などの症状が見られた時には、再度、器質的な病気がないか確認する必要があります。これらの症状が見られた場合には、担当医師にご相談ください。